函館料理学会

9月5日・6日に函館で開催された第6回函館料理学会。
今回の参加は3回目となりますが、シェフの方々・料理人の方々の発表は大変感激的でした!

2016年のテーマは「イカ」。イカを用いた様々な料理もご紹介されていました。

食に携わる身として、毎年刺激を受け、感銘を受け、いろいろと考えさせられる非常に貴重な機会です。

ご参加のシェフ皆様のレポートをあげたいのは山々なのですが、全部に参加できたわけではないので割愛させていただきます。

簡単なメモ程度になりますが、今後お料理人を目指している方、料理家を目指している方、食がお好きな方、食に携わっている方にもぜひ読んでいただけましたら幸いです。

Restaurant Masa Ueki 植木将仁シェフ 「次世代に伝えたい料理の可能性 〜日本の歴史・文化・自然や季節をうつす料理と皿のイマジネーション〜」

“シンクロニシティ”=意味のある偶然の一致。

あたかも偶然の一致や発見のようだが、実は意味のある必然の一致と言える。「シンクロニシティ」を重要なキーセンテンスにあげ、あらたな組み合わせを生み一致融合させていくシェフのスタイルです。

上越ご出身(金沢)の植木シェフがお料理をする上で大切にしていることは、

定義1 金沢や上越の強度料理をひもといて自分の料理にアレンジし新しく現代料理に仕立てていく

定義2、素材が育まれる背景や環境の中から素材同士のマリアージュを考えデジタルとアナログを融合させて料理を想像していく

定義3、味覚を構成する基本味、「旨味」「甘味」「酸味」「苦味」をして「旨味」を考えながら料理をイメージ、形にしていく

だそうです。一皿に盛り込まれた素材の組み合わせなどは偶然の一致や発見ではなく、意味のある偶然の一致、まさにシンクロニシティ。

定義1“で言えば例えば鴨治部煮のアレンジ。「鴨胸肉の治部煮MASA’s スタイル」では鴨のコンソメを焼いて鴨のコンソメ・ポルチーニとともにガストロパック(真空調理)。皮面を再び焼いて提供

定義2“では「上越短角牛の藁焼き 雪中梅大吟醸ソース」をご紹介。
雪中梅の日本酒に藁で燻した上越短角牛(藁を食べて育っている)に新潟で出会った雪中梅の日本酒のソースを合わせています。上越短角牛は白樺や野菜のよもぎが生い茂る地で育っており、白樺の皮を使ったお皿やよもぎもお皿に盛り付けられています。

定義3“では「ファラグのキャラメリゼとショコラシャンティと天然車海老」を例に。
「塩味」のエビ・「苦味」のチョコ・「甘味」のキャラメル・「旨味」のフォアグラ・「酸味」のイチゴを合わせています。生きた車海老を茹でて氷水にとったもの、フォアグラに砂糖を振ってキャラメリゼしたものを盛り付けています。

植木シェフ 食材の扱い方3段階 ①50度洗い ②低温スチーム ③ガストロパック

50度洗い(食材を蘇らせる)→低温スチーム(旨みを引き出す)→ガストロパック

ガストロパックなどのデジタルを用いる調理の要素は素材ごとに温度帯や時間を決める(70〜80パーセントの下処理を施す)

一方アナログな要素は料理人の感覚と技術を持って仕上げることで料理が完成される

50度洗い 低温スチーム①50度洗い

50度の温度のままで調理。鶏肉などもバンバンジーにしてもしっとりとし上がるそう。たけのこもみずみずしさと本来の味わいが残るとおっしゃっていました。

豚肉・鶏肉・筍などの野菜やふぐを例にご説明くださいました。

 

低温スチームの特徴②低温スチームの特徴

ふっくら柔らかい仕上がりが最も特徴的。九州の地獄蒸しもこれが原点?柔らかい低温の蒸気で蒸すことによって素材を傷めずに調理ができます。豚肉もコラーゲンが残ったまま調理できるなどのメリットがあるそう。

 

 

・あく抜き効果が抜群でほぼ水晒しは不要

・野菜はしゃっきりと甘みもたっぷり

・肉や魚はふっくらと柔らかくなり豊かな食感を生む

・低温で蒸すと甘みが凝縮され美味しさが増す

・栄養素が壊れない

・生のままよりも長く保存可能

ガストロパックの特徴③プロの技!植木シェフのガストロパックの温度帯と使用方法

1、肉類(特に赤身肉)は温度帯40度前後で減圧20分、その後5分休ませる

2、魚類は温度帯20度設定で減圧10分、その後2分休ませる

3、野菜類はスライスにして温度帯25度設定で減圧30分

“今回テーマの「イカ」について”

「旨味」のやりいか、「苦味」のパプリカ、「甘味」のグレープフルーツ、「酸味」の玉ねぎピクルス・イカスミを合わせたもの、「旨味」にはパプリカムース
マグロをのせる(マグロは以下を食べて育つ 大間マグロ)

おいしそうです・・・・!

デジタルだけではない!大切な要素とは・・・・?

デジタルな技術を用いた調理法については様々やり方があって、昨今では科学と調理については多く議論されています。

ですが、植木シェフがそこでおっしゃっていたのは“人の手よって作るものは料理、機械によってやるものは調理

そして大事なことが素材と向き合うこと。料理の可能性を信じて素材の産地に行き、素材と向き合うことで、日本の歴史や文化、自然の背景を理解して料理として再現することを提唱されていました。

野菜は野菜以上に、肉は肉以上に調理することが大事で機械が導入されても考えなければならないと。

今後は機械の導入が増えてくるかもしれないけれど、最終的には人間の手でという思いがあるようです。

植木シェフのお料理写真もスライドで拝見しましたが、どれも美しく、東京にいながらあたかもその場に行ったように感じていただくことを大事にしているそう。一皿の中に込められたメッセージ、思い、素材が持っている味だけではない背景や自然との調和を感じさせる1皿1皿が印象的でした。